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原料について

About Material

ウール

Wool

ウールとは羊の毛のことを指します。オーストラリア、ニュージーランドをはじめ南アフリカ、ウルグアイ、アルゼンチン、フランス、スペイン、中国などの多くの国で飼育されている羊は世界中で約3,000種といわれています。
ウールは天然繊維でありながら、化学繊維には真似できない様々な特徴を備えた機能素材ともいわれています。保温性、吸放湿性などの高い機能は自然の力から羊を守るために長い年月をかけて進化して備わったものです。

保温性

ウールにはクリンプと呼ばれる捲縮(縮れ)があり、たくさんの空気を繊維の中に含むことができます。それらは外気を遮断する断熱材として機能し保温性に優れます。

吸放湿性

ウールの表面には人間の髪の毛でいうキューティクルのような、スケールと呼ばれる鱗状の構造があります。このスケールが温度や湿度によって開閉し、吸収した水分を水蒸気として放出し、体から気化熱を奪い、高くなりすぎた体温を適温にすることで、環境によって温かくも涼しくもなり、理想的な温度調節で快適さを維持してくれます。

弾力性

前述したクリンプによって弾力性が生じ、ふっくらした仕上がりになる上に引っ張られても元の縮れた状態に戻ろうとする収縮性が働き形状記憶に近い機能を持ちます。

防臭性

ウールは湿気を吸放湿するため、身体に残る汗の量を少なくします。通常においの原因となる細菌は、汗などの液体の形で繁殖する傾向がありますが、ウールは構造上水分が残りにくいため細菌が付着しにくく、におい分子を吸収し洗濯時まで閉じこめる性質があります。

防汚性

ウールは少量の水滴であれば、弾くことが可能です。「水を弾く」という特徴は、雨や水滴、泥などの水溶性の汚れがつきにくくなります。また、前述した菌が繁殖しにくいという特性は、頻繁に洗濯する必要性を少なくできるのでより環境に優しいといえます。

難燃性

ウール特有の繊維中に窒素と水分を多く含んでいる構造により、天然の難燃性を備えているため燃えにくく、安全性が高いです。多くの一般的な化学繊維のように焼け溶けて肌に張り付いてしまうこともありません。

耐光性

日光からの保護性能にも優れています。紫外線を吸収し、肌を守ってくれます。

生分解性

ウールの毛はタンパク質でできているため生分解性があり、廃棄して数年の間に土に還ります。一般的な化学繊維とは異なり100%再生可能な繊維といえます。

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メリノウール

Merino wool

「メリノ種」という純血種の羊毛を指し、産地として特に有名なのがオーストラリアです。メリノ種は数ある羊毛の中で特に繊維が細く滑らかで、伸縮性に富んだ毛質を持ちます。また、他の羊毛よりクリンプ(縮れ)が細かく絡み合いやすいので空気を多く含み、保温性も高く、最も高級な羊毛の内の一つとされています。毛質は非常に繊細でその繊度は11~23μmといわれ、同じメリノ種でもカシミヤ以上の繊度(細さ)を持つ柔らかいものから、そうでない粗いものまで幅広くあります。

カムバックウール

Comeback wool

オーストラリアのメリノ種と、英国種の羊の交配による一代交配品種であるカムバック種の羊毛を指します。カムバックという名前は、血種的にメリノ種に戻る(先祖返りする)ことに由来し、主にオーストラリアで呼ばれています。カムバック種の毛質は、メリノ種の持つ柔らかく肌触りの良い風合いに加え、英国種のハリコシを兼ね備えた、独特なスポンディッシュな風合いと膨らみ感が特徴です。繊度は約21~22μmで、地域によってクロスブレッド種、ハーフブレッド種とも呼ばれています。

シェットランドウール

Shetland wool

英国のスコットランドの北方海上に浮かぶ、シェットランド島およびその付近の諸島に生息している英国羊毛種のシェットランドシープの毛を指します。島は西岸海洋性気候となっており、1年を通して寒さを感じる時期が長く、夏も短くて冷涼です。冬には、北方海上からの極寒な冷たい海風が島中を吹き抜ける、厳しい環境に生息しています。毛質はハリとコシが強く、保温性や弾力性、耐久性にも優れております。またシェットランド島はとても岩の多い諸島のため、岩肌の海草を副食にしており、通常の英国羊毛種よりも柔らかさが増しているといわれています。実際に通常の英国羊毛種よりも毛が細いものが多く、柔らかくて軽く、膨らみが強いのが特徴です。しかし、個体としては体が小さいので、産毛量は少なく、貴重なものとなっています。

カシミヤ

Cashmere

偶蹄目 / ウシ科 / ヤギ属

カシミヤ山羊(ヤギ)から採毛されるうぶ毛のことを指します。カシミヤの名はインドのカシミールからでた名前ともいわれ、中国、モンゴル、チベット、中央アジア諸国、イラン、イラク、トルコなどに広く分布しています。特に中国の北西部、内蒙古自治区はもっとも良質で産毛量も多く、産地別にみると年間の温度差が大きい地域ほど良質な原毛が採れるといわれています。これは夏の暑さに慣れた山羊が急激な冬の寒さから身を守るために、良質なうぶ毛をたくさん蓄えるためで、中国内蒙古地区の例をとると夏の日中は30~40度にもなり、冬には零下15~30度で温度差は60度前後となるため、繊度が極めて細く、繊維が長い良質な原毛が採れる地域として有名です。
カシミヤ山羊は、厳しい風雪から身を守るため、外側は長く太い刺毛に覆われ、皮膚に近い内側には極寒から体温を保つため、細いうぶ毛を沢山蓄えています。カシミヤ原料として使用されているのは、このうぶ毛のみです。毎年、厳しい冬を越し暖かくなる晩春の頃にうぶ毛は自然と抜け落ちるので、自然に脱毛する前の3月~4月に羊毛の採取のようなバリカンではなく、ハサミで長い刺毛を切り取り、金属製の熊手のようなかたちをした採毛器を使ってできる限り刺毛を抜かないようにうぶ毛を梳き取ります。その後、洗毛機で油脂分や土砂を洗い落し、整毛機で刺毛やふけを除去することにより真のカシミヤ原料となります。

ヤク

Yak

偶蹄目 / ウシ科 / ウシ属

ヤクというウシ科の長毛種から採毛されるうぶ毛を指します。チベット高原を中心に、夏は植物の植生限界領域である約6,000mに住み、冬を迎える前に3,000m位に下りて生育しています。山岳高地にしか生息できない、厳しい環境に耐える限られた動物で、現在では絶滅の危機に瀕しており、中国国家一級重点保護動物に指定されています。ヤクはチベット族の人々が家畜として放牧しており、古くから生活を支えるライフラインとして欠かすことの出来ない存在です。荷物の運搬、使役、繊維、皮、骨、角、乳、糞の燃料まで、全ての部分が無駄なく有効に使われています。ヤクの家畜化は古く、3,000年前にチベット人によってなされたと伝えられています。
ヤクの毛は一般的に黒から暗褐色で、白もあり、極寒に耐えるため、踵のあたりまで達する黒い刺し毛で覆われ、内側に細いうぶ毛が密集しています。外側の堅くて長い毛はテントやロープの素材として使われ、内側のうぶ毛が衣料品やコートに使われます。うぶ毛は17~19μm、長さ3~3.5㎝で、大人のヤクは年間0.75~1kgのうぶ毛を採毛できます。ヤクは換毛しないため暑さに弱く低地では生きることができません。オスは体重約8,00kg、体長約3.3mで、メスは300kg、約2m位になります。

キャメル

Camel

偶蹄目 / ラクダ科 / ラクダ属

双峰種(フタコブラクダ)の毛から採毛されるうぶ毛を指します。ラクダには2種類ありアラビアからアフリカの砂漠に生息する背コブが一つのヒトコブラクダと、中国北西部(内蒙古)、モンゴル、チベット、中近東にわたる中央アジアの砂漠地帯に生息する双コブのフタコブラクダとがおり、ヒトコブラクダの毛は短くて太いのでほとんど利用されません。
キャメルの主産地の中でも中国内蒙古自治区オルドス地域西部の砂漠に囲まれたアラシャン地方は最も繊度の細い毛が取れる優良産地として有名です。この地方の繊度は16~18μm前半と極めて細く、しかも上品な淡い色合いと柔らかさ、独特のヌメリ感があります。キャメルの毛は年に一回自然に脱毛するうぶ毛を集めるので、毛が落ちる前に梳き取って土砂の含有を避け品質向上を図っています。羊毛のように刈り取らず整毛して刺毛を取り除くことで16~21μmのうぶ毛が採毛できます。

アンゴラ

Angola

兔形目(ウサギ目)/ ウサギ科 / アナウサギ属

カイウサギの一種で、長毛種の「~アンゴラ」と名の付く品種のウサギの毛を指します。純血種として公認されているのは、「イングリッシュアンゴラ」、「フレンチアンゴラ」、「ジャイアントアンゴラ」、「サテンアンゴラ」の4種類です。主な産地は、中国、フランス、チェコ、アルゼンチンで、アンゴラという名称はトルコのアンカラ地方が原産とするという地名説と、アンゴラ山羊、アンゴラキャットなど長い毛を持つ動物に冠したという説があります。
体重は3~4kgで1年に4~5回はさみで採毛されます。種類によって変動はありますが1頭当たりの採毛量は年間280~450gで1回の採毛時の繊維長は25~60mm位です。繊度はうぶ毛で12~14μm、刺毛で30~120μm、毛は純白で光沢があって軽い繊維です。整毛機で刺毛を取り除いた原料を、ディヘアーアンゴラと呼び、特に高品質なものはその後さらにハンドピックで刺毛を取り除きます。

ブルーフォックス

Blue Fox

食肉目(ネコ目)/ イヌ科 / キツネ属

ブルーフォックスから採毛されるうぶ毛を指します。養殖されているフォックスの中で最も産毛量が多い種でほとんどはスカンジナビア産でしたが、近年は中国の黒龍江省や広東省でも盛んに養殖されています。シルバーフォックスよりも刺毛が短くうぶ毛の密度が高いので耐久性に優れ、フォックスの中で衣類用に最も優れています。
ブルーフォックスは冬になるとツンドラ(凍土)の雪や氷に同化するよう淡く青みがかったペールグレー色の毛をまといます。夏場になると茶色の毛に生え変わり土や木々に身を隠す色に自然と生え変わります。毛質はスポンジのような中空構造の長い刺毛と、短いが柔らかくて軽い保温性に優れるうぶ毛の二重構造で、抜群の保温力は-50℃の極寒地でも生存できるといわれます。近年は毛皮での使用が減少し、殺すことなく毛だけを梳き取って紡績用に使用する動きが活発になり、高品質な原料が手に入りやすくなりました。ブルーフォックスの特有のヌメ感と、保温性にも優れた柔らかで軽く暖かな風合いと、ファーのような高級感のある毛羽立ちが特徴で、刺毛を除いた繊度は 18.0~19.0μm程です。